私も母親になりたいわ

 ――とうにすんだわ。 ――うれしがっていらっしゃるでしょうね。 ――可哀いいお子さんよ。 ――私も母親になりたいわ。 ――おおいやだ、私はちっともそんな気はしないわ。 ――そう? ――ええ、いやじゃありませんか。私はただ男に可哀がられるのが好き。 ――まあ。Aの声 今夜はまだ灯《ひ》がついてるね。お前たちの肌が、青い紗《しゃ》の中でうごいているのはきれいだよ。 ――あらもういらしったの。 ――こっちへいらっしゃいよ。 ――今夜はこっちへいらっしゃいましな。Aの声 お前は金の腕環《うでわ》なんぞはめているね。 ――ええ、何故?Bの声 何でもないのさ。お前の髪は、素馨《そけい》のにおいがするじゃないか。 ――ええ。Aの声 お前はまだふるえているね。 ――うれしいのだわ。 ――こっちへいらっしゃいな。 ――まだ、そこにいらっしゃるの。Bの声 お前の手は柔らかいね。 ――いつでも可哀がって頂戴な。 ――今夜は外《よそ》へいらしっちゃあいやよ。 ――きっとよ。よくって。

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